MTAセメント

MTAセメント直接歯髄保存療法(MTAセメントで神経を温存)

MTAセメントを使用することで、これまでは神経を取らなければならなかった深いむし歯でも、高い確率で神経を温存することが可能になりました。

MTAセメントとは、根管穿孔部位を封鎖する材料として開発された歯科用セメントです。多数の症例に使用されて高い臨床評価が得られています。ケイ酸カルシウムを主成分とするMTA(Mineral Trioxide Aggregate)は、生体親和性に優れ、高い封鎖性、石灰化促進作用を兼ね備えた抗菌性に優れた革新的な材料です。

大きく深く進行したむし歯を除去した結果、神経まで虫歯が到達してしまっていた場合、歯の神経が露出します。これを露髄(ろずい)と言います。露髄するほどの深い虫歯では、歯の神経(歯髄)はむし歯菌によって炎症を起こしています。

この炎症が治癒する程度の可逆性の炎症の場合、MTAセメントで封鎖することでかなりの高い確率で神経を温存することができます。

MTAセメントでパーフォレーション(穿孔)を封鎖

根管治療において、過去の治療で歯の根の中に穴が開いてしまっていて治りが悪かったり、完治しないことがあります。また、根管内部まで虫歯が進行してしまって根の中の壁に穴が開いてしまうことがあります。これらの穴のことを穿孔、パーフォレーションと呼びます。こういったケースでもMTAでパーフォレーションを封鎖することが可能です。

 

MTAセメントの特徴

  • 強アルカリ殺菌性
  • 緊密な封鎖性
  • 今までのセメントにはない高い生体親和性

この3点が神経の長期的な温存を可能にします。MTAセメントで封鎖後、痛みの出ないことを確認して接着性材料でカバーします。最終的にはセラミックを接着させることで細菌の侵入を防ぎます。神経に症状が出ることを防ぎ、むし歯の再発も防止します。
MTAセメントを使用するにあたって確実を期すために、むし歯の除去、MTAセメント封鎖治療時にはマイクロスコープを使用して治療を行います。

MTAセメントを使用した治療例

①術前

術前写真です。他院での左上6番(写真中央の歯)の「セラミック治療後に痛みが取れない」と来院されました。一見問題がないように見えますが、歯の左側のセラミックのまわりが黒く透けて見えます。

②セラミック除去

セラミックを除去すると、虫歯が大きく進行していました。もう少し我慢してしまうと神経を取らなければならないところでした。神経を温存するためのお薬も、使い方次第ということがこれを見てわかります。

③虫歯部分の除去

虫歯を取り切った写真です。神経まで虫歯は進行していました。虫歯を除去すると、神経が露出していました。神経からの出血は収まり、可逆性の炎症(炎症がおさまり、元に戻すことが出来そう)と判断し、患者様にご説明させて頂き、「MTAセメント」を用いることにしました。

④MTAセメント直接被覆

「露出した神経」を「MTAセメント」で「直接覆髄」した状態です。この日は「グラスアイオノマーセメント」で仮に封鎖します。この状態でMTAセメントの完全硬化を待ちます。

⑤裏装

数日後に痛みが消失したことを確認し、アイオノマーセメントを除去し、接着性材料のコンポジットレジンで「裏装(りそう)」を行います。形を整えて、この状態でセラミックの印象を行います。

⑥セラミック装着

セラミックを接着し、治療が終了となりました。治療前の痛みは消失しました。